設立趣旨

知的財産を創造・保護・活用する上において公開制度は重要な役割を果たしてきました。四半世紀前までは、特許庁が公報を発行し、民間事業者がユーザーに必要は公報を印刷して届ける、といった官民の役割がはっきりしていました。

 

ところが、インターネットの普及によって、役割や棲み分けがあいまいになり重複投資が発生しています。官民が無駄な投資をなくし、公開制度を効果的かつ効率的に担うためには、情報交換の場が必要です。

 

そのような課題認識を持った事業者が、関係者間で情報・意見交換の場を形成することを目的として、日本知的財産情報サービス事業者協議会(JIPISA)を創設しました。

 

特許庁と民間事業者と役割分担については、平成14年~平成15年に「産業財産権情報利用推進委員会」が開催され、平成15年3月に報告書がまとめられました。骨子は下記の通りです。

国と民間とのベストミックスで一般ユーザーの多様なニーズに応えていく

 

国の役割:正確で基本的な一次情報の提供

民間の役割:国が提供する正確な一次情報に高い付加価値をつけた情報を提供

(平成15年3月 産業財産権情報利用推進委員会 報告書より)

また、平成27年~平成28年には「産業構造審議会 知的財産分科会 情報普及活用小委員会」が開催され、平成28年5月「特許情報のさらなる活用に向けて」と題した報告書にまとめられました。骨子は下記の通りです。

グローバル化の動きに十分対応しつつ、ITの進展、海外庁のサービスの状況、民間事業者のサービスの状況、中小企業、個人なども含む我が国ユーザーの要望などを十分に踏まえた上で、我が国ユーザーが享受するサービスの質が全体として世界最高水準となるように特許情報サービスを提供していき、特許情報を広く普及していくための基盤を引き続き整備していくべき。

 

国は、保有する正確で基本的な一次情報を無料で提供していくことを原則としつつ、急増する世界の特許情報にも対応する観点から公報や要約について、保有する翻訳文等を提供していくことを通じて、民間事業者が高い付加価値を付けたサービスを提供していくための環境を整備し、我が国ユーザーによる一層高度な特許情報の利用を促していくべきである。

(平成28年5月 産業構造審議会 知的財産分科会 情報普及活用小委員会 報告書「特許情報のさらなる活用に向けて」より)

国が基本的なサービスでユーザーの裾野を広げ、高度なサービス求める層に民間が対応、裾野が広がれば、高度なサービスを求める層が厚くなる、といったストーリーで、民間事業者にはより高度な付加価値が求められることになりました。

 

分析サービスや知財管理システムとの連携など、高い付加価値やグローバル情報を扱う事業者が生き残り、現在の知財情報サービス業界を支えています。特許法などに規定されている公開制度は、産業界での効率的かつ効果的なイノベーションのための情報公開制度として、公的機関のみならず民間企業がその一翼を担っていると考えます。

 

今後も民間企業がその責務を全うするためには、効率的な投資による高い付加価値化が必要です。そのためには、我々民間事業者が公的機関の守備範囲を正確に理解し、官民での棲み分けを念頭に無駄のない投資をしていくことが重要です。

 

公的機関が担う一次情報の提供は時代とともに解釈が変わるため、定期的な意見交換の場が必要だと感じています。たとえば、20年前、まだメモリが高かった時代には、公報の全文検索が付加価値でしたが、今は当たり前の検索機能です。また10年前であれば、機械翻訳が付加価値でしたが、今では一次データに近い存在です。この様に技術の進歩や時代背景によって解釈が変わるのはしかたないと思いますので、それを民間事業者と公的機関で認識を合わせることが必要です。

 

また、民間企業同士でも、切磋琢磨をしつつ、得意な部分を伸ばし、共通部分は提携するなどで補うことにより、業界全体の投資効率を上げて付加価値の底上げができるとよいと思います。

 

このように、特許庁関係者と、あるいは事業者相互に意見の交換の場があるとよいと思い、今回、わが国の知的財産情報業界の健全な発展と、知的財産情報サービスの普及によって産業界に貢献することを「日本知的財産情報サービス事業者協議会(JIPISA)」の目的としています。

 

特許庁の管轄部署の方には、この様な構想があることを創設前からお伝えし協力を仰ぎ、第1回の会合から参加いただき、有意義な意見交換を継続しています。